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2004-10-11

山道をバスはゆく

 内陸のカストロヴィッラリから西海岸のディアマンテまでは、地図で見ると直線距離で40キロ足らず。ところが、道路に書かれた標識には90数キロという数字が書かれていた。しかも、そこを3時間かけて1日2往復のバスは走るのである。
「ふつうは、いったんコセンツァにバスで南下してから、鉄道でパオラに出て北上するけどなあ」と、周囲の人たちもあきれ顔である。

 さて、そのバスであるが、発車直後こそ、学校帰りの高校生で超満員だったが、最初の大きな町サラチェーナを過ぎると、座席はガラガラになった。
 あとは、くねくねとした山道を下ったり登ったり。フィルモ、ルングロ、アックァフォルモーザと、次々に丘上都市を通過していく。そのたびに、私は右の席、左の席と移動しながら、開けた窓からカメラを構えるのである。
 最後の1時間は、2000メートル近い山の峠を越えるために、一気に気温が下がる。そして、いいかげん飽きたころに、視界が開け、はるか遠くに夕日の光る海が見えるのだ。海抜が高いので、水平線がずいぶん高いところにあるのが印象的だった。
「ここは、アペニン山脈がもっとも海に近くまでせりだしているところなんですよ。海岸線から3キロの地点に、1700メートルの山があるんです」
 あとで出会うことになるディアマンテのホテルの主人は、こう教えてくれた。
 結局、ディアマンテまで乗り通したのは、われわれ2人のほかには、60歳くらいの女性と運転手だけであった。
のどかなディアマンテの海岸


 さて、到着したはいいが、ホテルの予約はしていない。バスターミナルの周囲にはタクシーもいなければ電話もない。中心地とおぼしきところを目指して歩きはじめたが、疲れ切った妻は「もう歩きたくない」という。
 しかたがないので、荷物と妻を道端に置いて、ホテルを探すことになった。

 早足で5分ほど歩くと町はだんだんとにぎやかになり、海岸線に沿って広々とした散歩道が見えた。すると、反対方向から実に上品そうな初老の夫婦が歩いてくる。すがる気持ちで私は尋ねた。
「すいません、この近くにいいホテルはありますか」
 すると、奥さんは自信たっぷりに教えてくれた。
「ええ。その坂を降りたところにある『ホテル・リビエラ』が最高よ!」

 超高級ホテルでもなさそうなので即断。フロントで、妻を迎えるためのタクシーを頼もうとしたら、主人みずから自家用車で向かってくれるという。
 まもなく、小さなバールのそばの歩道にへたりこんでいる妻を拾ってホテルにもどることができた。

 写真は、ディアマンテの町である。バスは、この後ろに見える山を越えて、はるばるやってきたのだ。

・きょうのひと言
「20年前はもっとよかった!」
 ホテルで昼食をとっていると、出張とおぼしきイタリア人のビジネスマンと隣り合った。こちらが「南イタリアはが好きなんですよ」と言うと、彼はこう答えたのだった。どう見ても30代なかばの男なんだけど……。
イタリアでも懐かしものブームか。

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イタリアの旅 北から南まで」カテゴリの記事

コメント

バスの車窓から見た丘上都市(山岳都市)は、フィルムカメラで撮ったので、また別の機会にホームぺージで公開します。

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著書

  • 社会人に絶対必要な語彙力が身につく本[ペンネーム](だいわ文庫)
  • 『ようこそシベリア鉄道へ』(天夢人)
  • 『定点写真でめぐる東京と日本の町並み』(青春出版社)
  • 『日本懐かし駅舎大全』(辰巳出版)
  • 『鉄道黄金時代 1970s──ディスカバージャパン・メモリーズ』(日経BP社)
  • 『国鉄風景の30年―写真で比べる昭和と今』(技報堂出版)
  • 『全国フシギ乗り物ツアー』(山海堂)
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