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2004-10-10

山と谷に囲まれた町・チヴィタ

 10月8日、カストロヴィッラリを発つのは午後2時10分に決定。それまでに、近郊の町を尋ねることにした。行き先は、ホテルの人の意見をもとにして、車で約20分の距離にあるチヴィタ(Civita)に決めた。
「モラーノとアルトモンテに行ったのならば、それに匹敵するのはチヴィタだ」という。
 ほかにも、サラチェーナやルングロという選択肢もあったが、「サラチェーナは単なる山に町があるだけ(まあ、それだけでも十分に行く価値はあるのだが)だけど、チヴィタは町と自然の調和が素晴らしい」というのである。
チヴィタの町の全景


 チヴィタにはバス路線もあるようだが、午後の長距離便に乗りそこねても行けないので、奮発してきょうもタクシーで往復することにした。
 やってきたのは、すでに顔なじみになったタクシー会社の社長。年格好は50代後半で、バスターミナルのそばに小さな事務所を置いている。配車がとどこおると、社長じきじきに自家用車らしきいい車を運転するわけである。

 さて、そのチヴィタである。イタリアじゅうに同じ名の町は多く、チヴィタ・ディ・バーニョレージョのように、「どこそこのチヴィタ」と呼ばれるのだが、ここは徹底して「チヴィタ」だけなのである。
 前置きはこのくらいにして、そのチヴィタは期待以上の素敵な町であった。高い山と深い谷に囲まれて、わずかに平らな土地を中心に町ができているという印象である。

 また、ほかのカラーブリアの山の町と同じく、アルバニア人を先祖とする人が多く住んでおり、町にはアルバニア語の標識があちこちに建っていた。アルバニア人は、南部のイタリアに100万人の単位で住んでいるのだ。そんな町の中心の広場には、よくアルバニアの伝説的な英雄スカンデルベックの胸像が建っている。もっとも、こんな銅像をわざわざ建てたのは歴代のイタリア政府によるアルバニア人懐柔策という話を聞いたことがある。
イタリア語とアルバニア語が併記された標識


 東洋人にはなれていないらしく、すれ違うじいさんばあさんにジロジロとにらまれるが、「ブォン・ジョルノ」というと、すぐに和やかな顔になって返事を返してくれるのは気持ちがいい。
 調子に乗って、「美しい町ですね」なんて付け加えると、これまた効果絶大。「あそこに行くと見晴らしがいい」とか「どこそこで出来立てパンを売っている」という貴重な情報を教えてくれる。

 この町も、昼前には中心に広場に、親父・爺さま軍団がたむろしはじめる。ただしゃべっている人もいれば、カード遊びに興じている人もいる。
 そんなバールの1つに足を踏み入れビールを頼むと、案の定、いろいろと話しかけられた。
「なんだ、きょう帰るのか。あしたからお祭りなのに」「日本人か、オレは歌の仕事をやっているけれど、昔サンレモ音楽祭に出た岸洋子と会ったことがある」などと、人の話を聞かずに、もっぱら自分のことを話す一方である。

 ふだんからそんな客しかいなくて、言いたいことが溜まっていたのか、客がいなくなると、今度は気のよさそうな太った女店主が、自分のことを私たちに話しはじめた。
「結婚してドイツに20年以上住んでいたのよ。でも、生まれ故郷のここがいいわね。ドイツにいたらイタリア語をだんだんと忘れていったけど、イタリアにいたら今度はドイツ語を忘れてしまったわ、ハッハッハ」

 それにしても、きょうもまた暑かった。イタリアに来て、これまで晴れ続きである。町はずれまでやってきて、止まらない汗をぬぐいながら、町の全景を撮っていると、見慣れた車がやってきて、タクシー会社の社長が窓から顔を出した。

・きょうのひと言
 ナポリで生まれで38年間カストロヴィッラリに住んでいるタクシー会社の社長に、「ナポリとこことどっちがいい」と質問した答え
「こっちだなあ。なんといっても静かだし。ナポリに行くと落ち着かないよ」

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イタリアの旅 北から南まで」カテゴリの記事

コメント

POOh!さん、こんにちは
遅れがちだったブログですが、なんとか本日に近づきつつあります。
きょう(10日)がチヴィタのお祭りだったので、この日に行けば民族衣装の人を見ることができたでしょう。
考えてみれば残念なことをしました。ディアマンテの土産物屋にはカラーブリアやアルバニア系の民族衣装の写真(売り物ではないんですが)が飾られていました。

あ、バールのお兄さんの写真、やっぱり見たい?
もちろん写してあるけれど、さすがにアップで世界に発信するのはマズいかなと思って控えておりました (^^;;
こんど会えたときにこっそりとお見せしますね。

そうそう、アルバニア語併記の看板の写真を加えておきました。見えるかな?
旧市街には、アルバニア語のみの看板が2、3あったのには驚きました。

木の実さん、チビタのギャグを入れようかなと妻にほのめかしたところ、即座に止められました (^^;;
ここあたりのアルバニア人は、オスマントルコの進出から逃げてきた人たちなので、イスラム教徒ではなくてキリスト教徒(ギリシャ正教系だったかな?)です。
ミサも独特のものらしいですよ。

駄菓子の旦那、こんばんは。
シャンリィさんじゃないけど、私も毎日楽しみにしております。IEから書き込もうとしたらなぜか文字化け。ネスケだったら大丈夫みたい。やっぱりMacでMSのソフトを使うということ自体が苦しい?

と、こんなことはどうでもよくて、Castrovillariとその周辺、地図で確認しました。Pollino国立公園のカラブリア側ってとこですね。Pollino山地を挟んでカラブリアとバジリカータ両方にアルバニア人の街が点在してるのでしょう。アルバニア語併記のようですけど民族衣裳を着てる人はいませんか?

それよりさぁ仲良くなったっていう超二枚目のバールのお兄さんの写真は?楽しみにしてんですけど〜。ま、まさか、撮ってない?そりゃないでしょ、見〜せ〜て〜。小柄でプリプリして眉毛がつながってるって類のカラブレーゼしか会ったことないもんで。

チヴィタ、と聞いてデカパンとすぐに思い浮かべた人、それはたぶん40代以上ね。(^.^)南部ってイスラム教徒の建物も多いと聞いてたのですが、そこはアルバニアの縄張りだったのですか。山はそんなにも高く見えませんがどれくらい?天気に恵まれて良かったですね。東京は台風が去っても、ちっとも天気よくなんない(-_-;)行いが悪いのか、風邪までひいてコモッテマス。おかげで、家にいても旅に行ったつもりになれるんで楽しいっす。

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著書

  • 社会人に絶対必要な語彙力が身につく本[ペンネーム](だいわ文庫)
  • 『ようこそシベリア鉄道へ』(天夢人)
  • 『定点写真でめぐる東京と日本の町並み』(青春出版社)
  • 『日本懐かし駅舎大全』(辰巳出版)
  • 『鉄道黄金時代 1970s──ディスカバージャパン・メモリーズ』(日経BP社)
  • 『国鉄風景の30年―写真で比べる昭和と今』(技報堂出版)
  • 『全国フシギ乗り物ツアー』(山海堂)
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