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2004-10-19

"普通の国"になった(?)イタリア

 2週間という短い旅であったが、後半はカラーブリア一周というかなり刺激的な旅だったこともあって、まだイタリアぼけが治りきっていない。
 昨夜などは、自宅でちょっとうたたねして、ふと目が覚めたところ、「あれ、いまはどこの町にいるんだっけ?」と、しばし茫然としてしまった。旅の途中の気分でいるのか、周囲を見回しても、数秒間は、いまどこにいるのか見当がつかなかった。かなりの重症である。
ティレニア海沿岸をゆく列車の車窓


 さて、そんな気分が冷めないうちに、今回感じたイタリアの印象をまとめてみようかと思う。今回は、昔とくらべて感じたことを中心に。

 もっとも変わったと感じたのが、鉄道のサービスである。以前は、ガイドブックに「イタリアの鉄道は車内放送がないので、降りる駅に注意」といった記述が必ずあったものだった。
 しかし、特急エウロスター(ユーロスター)では、駅に着く前に必ず車内放送がある。しかも、「Trenitalia(トレーニタリア--旧・国鉄の愛称)をご利用いただきありがとうございます」なんてことばが入るものだから、以前のサービスを知っている人にとっては驚きである。エウロスター以外にも、列車によっては車内放送を聞くことができた。
 さらには、ローカル線の無人駅でも、「まもなく、○○発××行き△△列車が到着します」というなる放送がテープで流れて、これまたビックリである。
 新しい車両は、座席のそばに電源の差し込み口(コンセント)がついている。これはパソコンの利用に重宝した。ぜひとも、日本の鉄道にも広がってほしいものである。

 町中で感じたのは、どこの町でもワインバーが増えたこと。以前のイタリアは、もっぱら「ワインは食事とともに飲むもの」という発想だったように思えたが、いまはそうとは限らないようだ。もしかすると、高級なワインを味わいながら飲むというのは、フランス、アメリカ、日本あたりに影響されたのかもしれない。
 コンプレート(コース料理)にこだわらない人が増えているのも関係しているのかもしれない。もっとも、そんな店でも、セコンド(メイン)の肉まで食っているイタリア人は多かった。
 私はといえば、その昔、イタリア語の先生に、「パスタだけ食べて帰るのは、赤だしの味噌汁を飲んで帰るようなもんだぞ」と"薫陶"を受けたために、いまだにメインを食べないと後ろめたい気分に襲われてしまうのである。
 ところで、パスタで帰ってしまう観光客が増えたためか、パスタの価格が上がって、メインの価格が相対的に下がったのが目立つ。以前のメニューでは、パスタの価格を低く見せて、メインで稼いでいたわけだ。
アマンテーア駅


 また、服の店でも靴の店でも、気軽に店内に入れるようになったのは大きな変化と思う。昔は、ショーウィンドウで品定めをして、本当に買う気があるときだけ店に入るというのが原則であった。
 自由に入れる店は、わざわざ「INGRESSO LIBERO」(自由に入れます)と書いてあったほどである。20年前は、本屋でさえ自由に本棚の中を歩ける店は少なかったものだ。
 もっとも、ショーウィンドウの実用度は下がってしまった。店の中に入らないと、品揃えも価格もわからないというのは、かえって不便なこともある。

 最後に、これは10年前ごろからだろうか、美術館での写真撮影が全面的に禁止になってしまった。以前は、フィレンツェのウッフィッツィ美術館でさえ、ストロボや三脚を使わなければ撮影してもよかったものだった(ストロボは紫外線が出るので、絵に悪影響を与えるという話である)。
 もっとも、これだけ人が集まって、みんなが写真を撮っていたら収拾がつかないだろう。ストロボが自動発光するカメラが増えたことも一因かもしれない。

 こんなことを見ていくと、よくも悪くもイタリアは"普通の国"になりつつあるのかなと思えてくる。便利なのはいいけれど、ちょっと寂しい気もするなあ。

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著書

  • 辞書には載っていない⁉ 日本語[ペンネーム](青春出版社)
  • 社会人に絶対必要な語彙力が身につく本[ペンネーム](だいわ文庫)
  • 『ようこそシベリア鉄道へ』(天夢人)
  • 『定点写真でめぐる東京と日本の町並み』(青春出版社)
  • 『日本懐かし駅舎大全』(辰巳出版)
  • 『鉄道黄金時代 1970s──ディスカバージャパン・メモリーズ』(日経BP社)
  • 『国鉄風景の30年―写真で比べる昭和と今』(技報堂出版)
  • 『全国フシギ乗り物ツアー』(山海堂)
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