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2004-10-14

重荷を背負うて歩いたカタンザーロ

 旅の終わりが近づくと、何となく落ち着かない。14日の夜までにローマの空港まで余裕をもってたどりつくには、どこまで行っていなければならないか、逆算しながら行動しなくてはならないからだ。
 13日はスティーロを朝8時45分のバスで発ち、モナステラーチェで鉄道に乗り換え、まずは州都カタンザーロ(Catanzaro)を目指した(州都の機能の一部はレッジョにあるらしいが)。

 幸いにも朝のバスに学生はおらず、乗客は町へ出るじいさま、ばあさまが中心。おかげで、私は堂々と後方に陣取り、バスの窓を開けてスティーロの全景を写真に収めることができた。
カタンザーロの旧市街


 鉄道のストはローカル線にはあまり影響がないとのことで、各駅停車の列車は定刻どおりにやってきた。そして、カタンザーロまでの約2時間を、右手に海岸線、左手に山岳都市を眺めながら、のんびりと過ごしたのである。

 カタンザーロは、バジリカータ州の州都ポテンツァにそっくりの丘上都市である。どちらもの町も、丘の下から見た威容は神々しいほどだ。国鉄線の駅と市の中心部とを、私鉄列車が急勾配の区間をはさんで結んでいるのも共通している。
 そして、どちらの町も、駅に荷物預かり所がないところまで共通していた。これは困りものである。おかげで、私は十数キロのリュックを背負ったまま、町をうろつくハメとなったのである。

 しかたがないので、町をざっと歩いたあとは、約30分おきに出ている私鉄に乗って、町を下ったり上ったりしていた。最初に乗った午後1時ごろは、学校帰りの生徒で超満員だったが、それ以降の便は比較的空いていた。
 新しく買ったコンパクトデジカメを丸出しにして乗り込むと、乗務員に目ざとく見つけられた。
「それはいくらするんだ?」「あんたは日本人か? トーキョーは、ホッカイドーにあるのかキューシューにあるのか?」「フジサンは、何メートルあるのか」と、矢継ぎ早に質問が浴びせかけられる。

 しまいには、「運転席から写真を撮れ」としつこく勧める。運転士のじゃまをしないように写そうとしたが、運転士もいっしょになって会話に加わっていたのが恐ろしい。
 丘上都市を巡るのが好きなんだといったら、イタリアのガイドブックにノーマークの町まで教えてくれた。次に来たときに行かなくっちゃ……。
カラーブリア鉄道のディーゼルカー


 それにしてもこんな急勾配をどうやって登るのかと思ったら、途中でアプト式(厳密にいうとちょっと違うのだが)になっているのである。これは収穫であった。運転席に招かれなかったら気がつかなかった。

 列車で町の上まで登ってから、もう一度ぶらぶらと散歩しながら町を降りていった。途中で、アプト式の線路が見渡せる場所があったので、ここで列車の写真を撮ろうと待った。
 やがて、車体全面にひどい落書きがほどこされたディーゼルカーがやってきた。私のことに気づいたのだろう、運転席にいた2人がこちらに向かって手を振ってくれた。

 ところで、きょう13日はイタリア中で大雨に見舞われたらしい。だが、私は相変わらず悪運強くちょっと降られただけですんだ。定食屋に入ったとたんに土砂降りになって、出て行くときにはやんでしまったのである。

 こんなカタンザーロを午後5時に出発し、ラメーツィア・テルメ(Lamezia Terme)行きに乗車。ここで、イオニア海側からティレニア海側に転じる。さらに列車で20分ほど北上して最後の宿泊地となるアマンテーア(Amantea)に向かう。
 例によってホテルの予約もしていないし、到着は7時過ぎになるが、なんとかなるだろう。

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イタリアの旅 北から南まで」カテゴリの記事

コメント

こちらこそ、こんどコメントを書くといっておきながら、それっきりにしてすみません。
しつこい風邪に好かれてしまい、辛い日々を送っておりました。
でも、やっと元気になったので、こんどこそ遊びにいきますね。

駄菓子さま、再来が遅れましたが
私の記事にトラックバックありがとうございました!
本当に嬉しい限りです。

カタンザーロは「山の大都会」ですか。
すごく気になります。
そういうのは、やはり現地へ行って
自分の目で見なければ分からないのでしょうが(^_^;

旅をしたい気持ちになったら
また足を運びます。それではまた!

エルモさん、はじめまして。
トラックバック送りましたよ。
「カタンザーロ」だけでなく、「カタンツァーロ」とも表記しておけば検索が簡単だったかもしれませんね。
ここは、「山の上の大都会」という、日本では想像できない不思議な町なんです。
こんど、そちらにもコメントを書きますね。

はじめまして!
『南イタリア周遊記』という本を読んで、カタンツァーロの事を調べていてココへ辿りつきました。なんせ写真が一切無い本だったので、どんな町並みなのかと想像は膨らむばかり。
良ければこちらの生地へトラックバックさせて下さいな!

なんとか日本に帰ってきました。
いま、成田市内でギネスを飲みながら書いているところ。
この話も、このあとで。
それにしても、すでにアマンテーアに行ったことがあるとは。
夜には黄色い光でささやかにライトアップされていました。

駄菓子の旦那、こんにちは。今頃はもうRomaですかね?

Stiloは私も行ってみたい街です。お目当てはもちろん例の素晴らしい教会。車だとそんな僻地ではないのですがねぇ。Catanzaroは駐車違反切符切られたことがあるので、パス!

そして何とAmanteaに宿泊とか?宿はシーズンオフだし、すぐに見つかるでしょう。海辺の道沿いに夏のバカンス用のホテルが結構あったと思います。それより素晴らしいのは旧市街。ほとんど廃墟ですが、思わず回り道して見てきました。くたびれ具合がとっても好み。Romaでいつも行くトラットリーアのカメさんがAmanteaの出身で、毎週末5時間かけて里帰りしてるらしい。店に行く度に最初の挨拶が「Amanteaはどう?」なんですわ〜。

な〜んか駄菓子さんのカラブリア便りを見ていると、また行ってみたくなりました。帰国後のさらなるご報告お待ちしてます。フェデちゃんバスも、ありがとさんでした。

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著書

  • 辞書には載っていない⁉ 日本語[ペンネーム](青春出版社)
  • 社会人に絶対必要な語彙力が身につく本[ペンネーム](だいわ文庫)
  • 『ようこそシベリア鉄道へ』(天夢人)
  • 『定点写真でめぐる東京と日本の町並み』(青春出版社)
  • 『日本懐かし駅舎大全』(辰巳出版)
  • 『鉄道黄金時代 1970s──ディスカバージャパン・メモリーズ』(日経BP社)
  • 『国鉄風景の30年―写真で比べる昭和と今』(技報堂出版)
  • 『全国フシギ乗り物ツアー』(山海堂)
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