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2004-10-13

岩山の中腹に広がる町・スティーロ

 12日のレッジョは、朝からぽつりぽつりと雨もよう。悪運もついに尽きたかと思いながら、駅に向かった。高級ホテルから駅に行くにはタクシーが常道というものだが、すぐ近くに市内バスの路線があることを昨日のうちから調べておき、切符も買っておいた。
スティーロの中心部に向かう道


 さて、きょうの行き先は、レッジョから直線距離で約100キロほど北東にあるスティーロ。昼過ぎには直通のバスもあるが、それまではカタンザーロ(Catanzaro)方面に行くローカル線(長靴の爪先の裏あたりを走る)に乗り約2時間45分。モナステラーチェ(Monasterace)という駅で路線バスに乗り換え、約30分でスティーロに着く。
 ここでもバス停には時刻表はおろか標識もなく、バールのにいさんやそのへんのおばさんに尋ねて、なんとかたどりつく。インターネットで、あらかじめ時刻表を調べていたからいいようなものの、さもなくば大変なことになっていた。

 というのも、スティーロ行きのフェデリーコ交通のバスは夕方まで数本は出ているのだが、戻りのバス便は朝の8時45分発でおしまい(*のちに昼便もあることがわかった……)! 大半は朝5時から6時台に発車してしまうという純粋な通勤通学バスなのである。ということは、どうしてもスティーロに1泊しなくてはならないことを意味する。
 さもなくば、ヒッチハイクか14キロの道のりを歩いてもどるしかない。タクシーは影も形もなかった。
 熟考した上で、スティーロに1泊する覚悟を決め、下校の高校生たちをお供にしてバスの客となったのである。

 市街地を抜けて周囲が開けると、スティーロの威容が目の前に広がる。屏風のような高い岩山の中腹に、家がびっしりと建ち並んでいるのが見える。神々しいまでの風景に圧倒され、ただ茫然と眺めるだけであった。どんな写真を撮っても、このスケールは表現できないと思ったしだいである。
 もっとも、車内の高校生はそんなことにも構わず騒いでいたが……。

 ホテルは予約していなかったが、問題なくとれた。新しいホテルのようで、値段はレッジョの半額以下。それでいて設備はほとんど変わりがなかった。
カットーリカ


 スティーロにも旧市街(Centro Storico)と新市街があり、旧市街の上方には「Cattolica(カットーリカ)」と呼ばれる10世紀に建てられたビザンチン様式の小さな教会がある。イタリアでもかなり珍しい建築として、雑誌や観光ポスターなどでよく目にするものだ。

 さて、問題の天気なのだが、私がスティーロに着くころには雨はやみ、太陽が姿を現した。たぶん、普段の行いがいいからなのだろう。まあ、ひどく暑くなったのは困ったが、傘をさして歩くよりはマシである。
 町を一周してみて、やはり1泊してよかったと思う。少なくとも、建築や丘上都市に興味のある人ならば、それだけの価値がある町だ。
 内陸に数キロ入っているのだが、高度が400メートルあるので、町からは海が見える。

 ただ、遠景を撮るには町から山を下り、何キロか歩かなければならない。あす朝の帰りのバスの窓から、必死で撮ることにしよう。いくら学生に笑われても……。
 スティーロは、カラーブリアでも有数の美しい町である。メシを食うところさえ充実させれば、観光地としてやっていけると思うなあ。

 あすは、鉄道のストがあるという。しかも、天気は荒れ気味とのこと。さて、どうなることか。

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コメント

日本に帰ってきてから調べてみると、スティーロに行くバスって、もっとあることを知りました。
レッジョ・ディ・カラーブリアからも何本かでているし……。
フェデリーコ交通のバスのホームページが一新されていました。あせらなくてもよかったのか……。

007さま、過分のお言葉恐縮します。
出来事をただ並べただけなんで、推敲なんて恥ずかしい。
でも、もっともっと書きたいことがあるところを、なんとかここまでに抑えるという我慢だけはしていますよ。
この旅もあとわずか。ああ、帰るのが面倒だ。

駄菓子さん、ご無沙汰してます。
ひさしぶりに遊びにきたら、なんとイタリア放浪中とは。 うらやましい。 毎日のレポート、忙しいでしょうに文章も推敲され写真も美しい。 プロとはすごいものですね。 

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