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2004-10-15

駅から徒歩5分の丘上都市・アマンテーア

 列車がアマンテーア(Amantea)に近づくと、こんもりした山が見え、城壁に囲まれた立派な町が見えてくる。この町ほど、駅に近い丘上都市はないだろう。もっとも、徒歩5分で行けるのは丘のふもとまでである。旧市街をめぐるには、そこから急な坂を登らなくてはならない。
駅のホームから見たアマンテーアの旧市街


 写真は、駅のホームから写したものだ。厳密にいうと「丘上」とはいえないかもしれないが、貫祿は十分である。

 さて、13日の晩、到着するのがまだ午後7時だと思って安心していたら、厚い雲が垂れ込めていたものだから、アマンテーアの駅に着いたときには周囲は真っ暗。水平線上にわずかに夕焼けの赤い色が見えるだけだった。
 しかも、駅前にはタクシーどころか店もない。しかたなく重いリッュクを背負って歩きはじめたが、交差点を左に曲がったのが悪かった。さんざんうろついたあげく、結局、右に曲がったところに1軒だけ、ホテル・メディテラネーオという看板が目についた(あとで知ったことだが、海岸のほうに行けば海水浴客相手の宿があったようだ)。
 それにしても、その名も「地中海ホテル」である。しかも、玄関を入ると立派な庭まであって、こぎれいなレストランまで付いている。
 最後の晩に多額の出費を覚悟したが、値段を尋ねるとなんとレッジョの3分の1。ツインの1人使用と違い、シングル専用室だから安いのだとはいえ、部屋も広いしバスルームも充実している。やはり、泊まるならば田舎、それもシーズンオフに限る。

 翌14日はやはり晴れ。朝っぱらとはいえ、急な坂道を登ると汗が吹き出してくる。
 だが、不思議ほどこの旧市街は静まり返っている。細い路地をうろうろしていても、たまに年寄りとネコを目にする程度である。
 さて、頂上の城砦近くまで登るにはどの道を行ったらいいかと戸惑っていると、上から声がした。
「カステッロに行くのか?」
 見上げると、3階の窓から70近いと思われるおじいさんがこちらを見下ろしている。「そうだ」と答えると、
「それならこの道をずっと右にぐるぐるまわっていけばいい。デストラだデストラ。別れ道があった常に右に行け。そうライト、ライト」
 右手をくるくるまわしているので、らせん状に登っていけと言っているようだ。それにしても、こんな田舎で英語の単語を使うおじいさんは誇らしげであった。
アマンテーアの旧市街


 10メートルほど歩いたかと思ったら、また頭の上から「デストラだ、デストラ」とおじいさんの声。「スィ、スィ」と返事をしながら歩いて行った。

 道はだんだんと険しくなり廃屋が増えていく。サボテンの実が落ちて腐った臭いに、ネコの小便の臭いがまじって、鼻をついてくる。
 そして、踏みわけ道の先に、ようやく教会の跡が見えた。城砦はさらに上である。このあたりで引き返したかったが、さっきのおじいさんに見つかると、うるさそうなのでがんばった。
 確かに上からの眺めはよかったが、朝の運動としてはちと厳しかった。まあ、10時55分発の列車に間に合えばいいのである。
 あとは、ローマの空港に向かうだけだ。もちろん、多少の時間の余裕はとってあるので、定刻にローマにつけば、1時間半ほどは市内の散歩ができるはずだ。

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  • 『ようこそシベリア鉄道へ』(天夢人)
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